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sometime,somewhere...
Posted by sammy - 2012.02.29,Wed
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Shwedagon Pagoda / Yangon, MYANMAR


キッカケは宿の情報ノートだった。
「日本人と話す機会を求めている2人がいる」と書かれていた「さくら図書館」はボージョーアウンサン・マーケットに近い27番の通りにあり、日本語を話すサンダー(女)とザーニー(男)の若い男女カップルは通りに面したカバン屋の奥のスペースを間借りして、集めた日本語の書籍を貸し出す仕事をしていた。
ただし、これは表向きの営業であり、それを設けることにより様々な人たちと出会うキッカケを作り、そのキッカケを基にビルマ人に日本語を教えたり逆に日本人にはビルマ語を教えたり、さらには日本人の訪問を受け、生の日本語を習得する機会を伺っていた。なぜならば、ビルマではビルマ人から教わる日本語は授業料が安いが、日本人から教わるとなるとその何倍もの授業料が必要となる。そのお金の工面が難しかった。
その結果、2人が考え出したのが「図書館」と銘打ったこのふれあいスペースだった。


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さくら図書館を運営するザーニー(左)とサンダー(右) / OISHI SUSHI, Yangon, MYANMAR


性格も明るく天然キャラのサンダーは23歳で、話す日本語の成熟度はかなり高い。
それもそのはず、来日経験こそないものの海外で行われる日本語能力試験2級合格の実力だから漢字の読み書きもそれなりに出来れば、言葉の発音も自然に近い。
対して24歳のザーニーはおっとりしていて日本語の発音が多少おかしなところもあるが、こちらの言っていることは何となく分かっている感じではある。
どちらかと言えば切り盛りしているのは女子のサンダーの方であり、訪問者に対してもテキパキとした対応を見せていた。

情報ノートには書かれていなかったが、軒先の看板には「2人が希望する場所へご案内します」と書かれている。
訊けば、新たな収入を得るために図書館を開けていない火曜日から日曜日の午前中と、月曜日の1日中を有料のガイドとして活用したいとのことだった。
ただし、これはつい最近考えて看板も作ったばかり。
自分が、「来週の火曜日だったらヤンゴンに居るから、どこかしらの村へ行きたい」とぶつけてみると、快くOKの返事が返ってきた。
そして、「もしよろしければ今晩、シュエダゴン・パゴダのライトアップにも案内します」とお誘いを受けた。
何でも、黄金に輝くパゴダは昼よりも夜空に浮かび上がる夜の方がオススメで、図書館を閉める午後5時半にここを出発して近くのバス停から行くプランを説明してくれた。
ヤンゴンはその日が2日目だったが、夜の過ごし方が退屈だったこともあり、すぐさまその話に乗った。
さらに訊けば、有料のご案内は今晩の僕が最初のお客さんだと言う。
「大丈夫か?」という不安よりも、いかにも人当たりもよく素直な若者そのものの誠実な2人の案内に、「これはラッキーなお誘いだ」と喜んだ。

***

約束の5時半、再び図書館へ行くとボランティアで来ている日本人大学生らが談笑していた。
その大学生らが帰った後、近くのバス停からパゴダへ向かう。詳しい路線図もなければ全てが中古の払い下げであるバスは、外装も何もかもがビルマへ輸入される以前のままだから区別もつかなければ行き先だって分からない。2人の案内がなければ乗れない代物だったから、束の間のローカルな気分も味わえた。

パゴダへはまだ薄暮の状態で着いたから、2人はまずは隣接する公園へと案内してくれた。
僕は今回、この旅へ出る前に掲げた目的のひとつは、この国の若者とディスカッションしたいことだった。
「国が変わる」と言われている今、それまでのこと今のこと、そしてこれからのこと、この国の若者はどう考えているのか直に話してみたかった。
思わぬことでその機会を得た。
公園のベンチに座り、2人はこちらの質問のいくつかに素直にありのままの考えで答えてくれた。
スーチーさんのこと、軍事政権のこと、発展から取り残された今のこと…。
決してネガティブではないその答えは、日本人の僕が考えることと何ら相違はないありのままの答えでもあった。
僕はそれに安心をした。
変な洗脳感がこの国の人たちにあるとしたら可愛そうだなと思ったが、若者は若者なりの答えを持っていた。ただ、未来は見えていなかった。
どうなるのか分からないこの国で未来を見つめるには酷だった。
今だけを考えるのが精一杯である。
それに、「この国の情報は私たちには正確に伝わらない」と言う話も直に聞いて、少なからず同情も覚えた。
情報はこうして、日本人から聞いて知ることが多いと言う。
民主化へ向けて国が変わりつつあることもあり、日本では連日のように新聞の国際面でビルマ関連の記事を目にするが、そういった動きの情報は国民には伝わっていないと言うことになる。
これでは未来を考える余裕がないのも仕方がないことだった。

そんな話をしていたら空は暮れ行き、公園の管理者が閉園を告げにやって来た。
公園の出口を出てしばらく歩くとパゴダへ登る階段があり、僕らはそこでサンダルを脱ぎパゴダへと登る。
サンダルを入れるビニール袋はサンダーとザーニーが脇にあった箱から拾ってきた。
「この箱はゴミ箱なんです」とサンダーは笑って言った。
全てがおまかせのツアーである。


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Shwedagon Pagoda / Yangon, MYANMAR


階段の残り数段から覗き見えた黄金のパゴダは目を見張る美しさが舞い込むようだった。
もちろん、登りきった場所から見るパゴダは美しすぎるほど美しく、2人がこのお誘いを薦めた理由はすぐに理解できた。
2人との出会いがなければ目にしなかっただろう美しさに、やはりこれはラッキーだと思った。

2人は初めての有料案内と言うこともあって、図書館備え付けの「歩き方」持参で丁寧に一つ一つの説明もしてくれた。
観光にさほど興味を抱かない僕のような旅人にはそこまでの必要もなかったが、そうしてくれることへの気持ちが嬉しかったのに逆に、2人は今晩こうしてここへ来れたことへの感謝の言葉を僕にくれた。
2人に限ったことではなくビルマの人たちは皆、丁寧である。
それは、このパゴダでも拝み倒した両手を床に着け、熱心に祈りを捧げる人たちを見れば明らかだった。


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Shwedagon Pagoda / Yangon, MYANMAR


2人の案内は有料とは言っても、いただく料金は6000チャットでいいと言う事で、それは日本円にすれば600円足らずでもあった。
これにバス代や入場料(外国人のみ)、帰りのタクシー代を入れても総額で1200円にも満たない料金である。
2人にしてみればお金をいただいて案内すること自体が忍びなく、案内料の額も日本人の人に相談して決めたと言うが、いかにも安かったこととほんの気持ち添えも込めて、帰りは中華街にある寿司の人気店「OISHII SUSHI」でご馳走をした。

翌日はヤンゴンを離れチャウンターへと向かうことになっていたから、2人には当初打診をした来週火曜日午前中の村案内を再度の案内として約束をして、すっかり暗くなったダウンタウンの夜道を歩いて別れた。
何色にもまだ染まっていないような2人に清々しさを覚え、出来ることならば2人の成長を見続けたい気持ちにも駆られた。と同時に、この国が変わってゆく過程での心配事も浮かぶ。
2人と再会するまでの5日間、ずっとそんなことを考えていた…。


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「さくら図書館」
2012年2月現在、ボーヂョーアウンサン・マーケットに近い27th st.に面したカバン屋の奥のスペースで開いている。
ボーヂョーアウンサン通りに架かる歩道橋の東側手前が27th st.で、そこから30mほど歩くと左手に「SAKURA」の看板がある。
開館時間は火~日の午後1時~5時半。月曜はお休み。

日本人の訪問はいつでも歓迎だが、くれぐれも節度ある行動に留意していただきたい。

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Comments
>浅見幸雄さん

さくら図書館が秋頃に移転する話は2人から連絡をいただいていました。
2人がこうして日本人相手に案内をしてくれたり、日本の文化に興味を持ってくれるのはうれしい限りですが、出来ることならば生活の礎となれるような職を早く持ってもらいたいのが本音です。
そんな思いも込めて、ミャンマーの社会の変革には期待をしています。
Posted by サミー - URL 2012.07.02,Mon 20:41:52 / Edit
よく読んだら3月24日はブログを書いた日のようですね。ヤンゴンは何度か行ったことがあります。さくら図書館も最近では6月16日に寄りました。ただ、秋頃に移転するそうです。
Posted by 浅見幸雄 - 2012.06.28,Thu 04:49:06 / Edit
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