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sometime,somewhere...
Posted by - 2024.04.20,Sat
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Posted by sammy - 2012.03.07,Wed
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チャウンター・ビーチのアイドル、ひかるちゃん / Chaungtha, MYANMAR


チャウンターは人口5000人ほどの小さな海辺の村だが、この小さな村にも日本人が住んでいた。
存在は出発前のネットでの様々な下調べで知り、住んでいるのはミャンマー人と結婚した女性で、テレビでもたまに放送する「世界の果ての日本人」なる特番にも出演したらしい。
あいにく僕はその回の放送を見落としていたが、せっかく自分もこの「世界の果て」へ来たならば、日本語でここでの暮らしやらいろいろな話を直接聞いてみたかった。

そのネットで調べた情報では女性はまだ若く、幼い娘もいるらしい。
僕の泊まっていた「シュエ・ヒンター・ホテル」で働いていると言う記述も目にすれば、ゲストハウスをやっていると言う情報もあった。
いずれもが乏しい情報であったことからホテルのフロントで「この村に日本人が住んでいると聞いたけど」と尋ねてみると、「あ、チセイのことね」と言ってその場で電話をつないでくれた。
電話に出た女性は確かに日本人で「アラヤと申します」と紹介をしてくれた。
アポも何もない唐突な電話だったから簡単に経緯を話し、今日はもう日も暮れているから明日の朝9時半にホテルでお会いしましょうという話になった。
後で分かった話しだが、彼女がこのホテルで働いていると言う話は間違いで、このホテルへは毎日のように遊びに来るためスタッフや経営者と親しく、ここへ泊まる日本人とも交流があるらしい。
そして、ゲストハウスをやっていると言う話は以前のことで、今はそのゲストハウスを売りに出す最中、その間はゲストハウスの経営も貸出し中だった。


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千星さんとひかるちゃん / Chaungtha, MYANMAR


翌朝、ビーチにせり出たホテルのバルコニーで朝食を終えて読書をしているとアラヤさんは幼い娘と一緒にやって来た。
極々普通と言ったら失礼だが、この「世界の果て」で暮らす日本人女性は特に変わった方でもない普通の女性で、タイムマシーンにでも乗った気分でこの地へやって来た僕からしてみれば、それが不思議でもあった。

女性の名前は荒谷千星さんで30歳。
5年前に結婚を機にこの地で暮らすようになり、今はミャンマー人の旦那と4歳になる娘のひかるちゃんとの3人で暮らしている。あいにく旦那さんはこの10日ほどヤンゴンへ出張中で不在だったが、この日は娘のひかるちゃんも風邪をこじらせて幼稚園を休ませたという名目(?)で連れ立って来てくれた。
そのひかるちゃん。
とにかく愛嬌があってかわいい。
初対面で「なまえは?」と訊くと、両頬に人差し指をあてて「ひかるちゃんで~す」と笑って答えた。
これでもう、ひかるちゃんからのつかみはこのオジサン旅人に対して完全にOKだった。
天真爛漫で4歳にして日本語とビルマ語が理解できるバイリンガル。
ホテルのスタッフらにも「ひかる、ひかる」と可愛がられていて、日本人の宿泊客にも人見知りすることなく愛嬌を振りまけるからすぐに愛されてしまう。
そんな特異(?)な性格のひかるちゃんは専ら、みんなのアイドル的な存在であり、それはさながらチャウンター・ビーチのアイドルと呼ぶに相応しい人気とふるまい(?)だった。

滞在中はこのアイドルに会うのが楽しみだった。
千星さんからもその交流の中からさまざまな話やアドバイス、さらにはガイドを雇っての村訪問の際にはバイクをお借りしたり、滞在を楽しむには十分なほどのお世話もいただいた。


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愛くるしい笑顔のひかるちゃん / Chaungtha, MYANMAR


最後の夜、浜辺ではサッカー大会で宿泊中のグループやその家族らが焚き火をし、さらにはバンド演奏までが特設のステージで始まり、踊り酔い騒いでいた。
そんな大人たちの喧騒を尻目にひかるちゃんは「つまらないの」と言っている。
「だって、ひかるちゃんの家、もうすぐ電気が来なくなっちゃう。あ、今日はここで寝るのかなぁ…」
ホテルなどは夜6時から半日だけ電気が使えるが、住民たちが暮らす村は夜9時半ごろにはその電気も切れてしまうらしい。ひかるちゃんはずっと、それを心配していた。
それでもアイドルは大人たちの人気者だから、その後に始まったダンス・ミュージックではステージの前へ担ぎ出されて肩車の上で手拍子をしていた。
その直後疲れたのか、ひかるちゃんは仲良くなったサッカー選手の姉に介抱されて浜辺に置かれた毛布の中でスヤスヤと眠りについた。
これが僕とチャウンター・ビーチのアイドルとのお別れだった。


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夜の浜辺で大人たちとダンスを楽しむひかるちゃん / Chaungtha, MYANMAR


翌日は午前10時発のバスでヤンゴンへと帰る僕を、いつものようにホテルへやって来た千星さんが見送ってくれた。
今日はひかるちゃんはちゃんと幼稚園へ登園したらしい。

千星さんがこうして日本からやって来る人たちと会うのが楽しみなように、ひかるちゃんも楽しみで仕方ないらしい。ただ、4歳児の記憶で、日本からやって来た旅人と遊んだ記憶は残らないだろう。
そう思うとちょっぴり寂しいけれど、僕にはこの最果ての地へやって来るリピーターたちの気持ちが少し分かるようになった。
僕もいつか、チャウンター・ビーチのアイドルと再会を果たしにこの地へやって来たい…。

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