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sometime,somewhere...
Posted by - 2024.11.25,Mon
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Posted by sammy - 2008.12.24,Wed


今年もいくつもの旅を楽しませていただいた。
そして、旅の中からいくつもの出会いが生まれた。
それらの出会いはいずれも偶然の産物のようなものであり、
それでいて時には旅の大きな部分を占めるような楽しみも与えてくれる。

もちろん、そんな面白い形に繋がるような出会いはいつもあるわけでなく、
予期せぬ形で起こるからこそ出会いは面白くもあり、はかない旅の一瞬でもある。

旅の出会いはまさに一生の中で唯一、その時その場所で共有をする「一期一会」なのかもしれない。

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1月末、僕は例年のごとく遅い冬休みを取ってラオスへ行った。
ラオスへ行こうと思ったのは僕の中で求めていた
「癒し」、「暑い」、「素朴」などのキーワードが合致していたことがあったが、
実際に行ったラオスは乾季真っ只中にもかかわらず太陽は連日姿を見せず、
肌寒ささえ感じるような気候だった。
要するに完全な「アテ外れ」であり、気分は当然のように乗り切らなかった。

僕にとってのラオス、ビエンチャンは2度目であり、観光要素を求める気持ちはサラサラなく、
アテがあるとすればギラギラに照らす太陽の陽に照らされた街並みや人々の活気だったが、
太陽が隠れてしまった1日は本当にアテもなく街中をさまよい歩いていた。

韓国人バックパッカーのインフォンと出会ったのは
鉛色の空が広がったビエンチャンのストリート・カフェだった。
いわゆる売店前の歩道上に設置された飲食スペースだが、
そこはビエンチャンで言うところの中心部であり、
それでいてのどかな風情の場所でもあり、
歩き疲れてゆっくりしたかった僕を「どうぞ」と相席に手招きしてくれたのがインフォンだった。

「たぶん…」韓国人だと思ったが、
警戒心のないフレンドリーなお誘いに乗じてその時は英語を使って他愛もない会話を楽しんだ。
お互いにアテが外れた天気に気分が乗らなく、マッタリとした時間を好んだからだと思う。
そして夕暮れ前、お互いに「今日は夕陽が楽しみなんだけど」と言ってその場を別れた。
午後に僅かだけ日差しが差し込んだ時間もあったので夕陽には淡い期待もあったが、
夕陽の姿を見るどころか、その日は夕暮れ前にはついに雨も降り出し、その雨は翌日も続いた。

そんな天気の中、再びインフォンと会ったのはバンビエンのつり橋のたもとだった。

旅先の出会いと言えば大概、会ったその場限りだがラオスの特例とでも言うべきか、
旅のコースがビエンチャンもしくは北のルアンパバーンを基点に一直線上にしかないラオスでは、
旅人が辿る場所、集う場所が集団移動のようにどちらかに進む。
だからこうして再び、都合を合わせたわけでもないのに会ってしまうのである。

それはその翌日も続き、連日の曇天に行き場を迷った僕が一念奮起して自転車を借り、
バンビエンから約13km先にあるモン族の村を訪れようとスタートを切った直後、
道のど真ん中で同じように自転車にまたがり、
行き場に迷っていたインフォンが僕の即席プランに乗っかる形で同行をすることになった。
これがこの旅唯一のツアー行為にあたる日韓男女によるモン・ビレッジ訪問だった。

モン・ビレッジはバンビエンの貸し自転車屋さんでいただいた簡易地図に場所は載っていたが
観光地であるわけでもなく、観光資源を求めている村でもない。
いわゆる本当の山岳民族の村だった。
だから結果的に2人で行ったのは正解で、
お願いをするわけでもなく村人たちは突然の訪問に家の中へ招き入れてくれるなど
丁寧な迎え入れをしてくれた。

そしてそこには昔ながらの暮らしがあり、
僕もインフォンも興味深くそれらを見入った。

即席だったからインフォンはカメラも用意していなかったが、
その代わりに僕が写した写真を後日、送ることにした。

IMG_0667.JPG
幼いモン族の赤ん坊を抱くインフォン

* * *

その晩、その日がちょうど僕の誕生日だったこともあり、
インフォンとは食事の約束をしていた。

一際強い雨が降る中、
インフォンは同じように旅の道中で知り合った韓国人の男性を連れて待っていた。
その男性はキムと言ってソウルで医療器具の営業マンをしているらしい。
僕と同じで野球が好きらしくソウルを本拠地とする韓国のプロ野球チーム、
LGツインズのキャップを被っていた。
僕の大ファンは日本では中日でその中日にはLGに在籍していたイ・ビョンギュがいる。
そしてキムは中日ファンを装った。

少々お調子者のキムを試そうと僕が
「イ・ビョンギュの中日での背番号は何番か?」訊ねるとキムは迷うことなく自信満々で「9」と答えた。
彼はまんまとハマった。
「9」はLGと韓国代表での背番号であり、中日では「7」を付けている。

かつて中日にはソン・ドンヨルやリー・ジョンボムなどの韓国野球のスーパースターが在籍し、
韓国では一番人気の日本プロ野球チームだったが
今はなんと言っても韓国の国民的スター選手のイ・スンヨプが巨人にいる。
韓国でのテレビ中継もまるでかつての日本のように連日、巨人戦ばかりが放送され、
今では国民の8割が巨人ファンだとも聞く。
要するに韓国の野球ファンは中日から巨人へ寝返りをしたわけで、
キムのような調子のいい韓国人からその真偽を試してみたかった。

「お前、本当は巨人ファンだろう?」。
好きな選手の背番号を間違えたばかりのキムは動揺して「違う、違う」と言っていたが、
本心を見透かしたインフォンは横でクスクス笑っていた。

窓のないオープン形式のレストランの外は土砂降りの雨だったが、
こうして異国の地で偶然に出会った韓国人と過ごす食事の時間は楽しかった。

日本人、とりわけ僕の世代くらいはまだ、韓国人に対する軽蔑や偏見が幼い頃に残っていた。
事実、近くには韓国人らの住む地区もあり、
民族の違いと言うだけの対立の構図は少なからずあり、それは同級生同士の中にもあった。
だから僕の中では自然と韓国を好きになれない気持ちが根付き、
幼い頃にはそれが永遠のものだと思っていたかもしれない。
だから今、こうしてふれあえることがうれしい。
旅を重ねるうちに僕の中にあった軽蔑も偏見も遠い過去のものへと拭い去ることが出来た。

* * *

途中からは韓国人が食事をしている姿を見つけた同じ韓国人4人組も雨宿りがてらに合流してきた。

以前知人から聞いた話では、韓国人は「コリアン・シェア」と呼ばれるほど団結心が強く、
「喉が渇いた」と言えば見知らぬ人間同士でも水を分け合って飲むらしい。

そんな彼ら彼女らだからお互いがひとり旅でもこうして打ち解けてしまうのだろう。
聞けば後から入ってきた4人組も元はバラバラの旅だったのがいつのまにか
親しく行動するようになってしまったらしい。
そう言えば4人組の中の2人は僕がビエンチャンをさまよい歩いていた時に何度となくすれ違っていた。

外の雨が小降りになった頃、皆々が宴を解散した。

* * *

翌日、足早の旅の僕はビエンチャンへ戻らなければならなかった。
バスの出発時間は午後だったのでホテルの部屋でノンビリしていると突然、
ルーム電話が鳴り響いた。
それはフロントからインフォンが僕への呼び出しにかけたもので、
驚いて出て行くと、「昨日のお礼」だと言って白い紙袋を手渡した。
「見て、見て」と言うから開けてみると
中味は僕が好物にしていたルアンパバーン・ベーカリーのドーナツだった。
一緒に渡された絵葉書には感謝の気持ちが英語で綴られていた。

思えば雨と曇天続きでアテが外れ通したラオスも、
それが逆に「一期一会」の時間を与えてくれたのかもしれない。
あの時の雨は案外、自分の中にあった過去を流した雨だったのかも。

そう思える旅の出会いに感謝!
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