摩周湖 / Hokkaido, JAPAN
神の子池 / Hokkaido, JAPAN
紅葉 / Hokkaido, JAPAN
十月十日。
かつて僕はこの日を目安に旅を重ねていた。
初めて旅らしい旅をしたと思えるのは22年前の1990年秋。
深夜の国道と高速道路を乗り継ぎ新潟まで車で走り、さらにはそこからフェリーで小樽まで。
待っていたのは秋色に染まった大地、北海道だった。
知床で初めて旅人宿へ泊まったその晩、「北海道で紅葉を楽しむならば十月十日を目安にしてみてください」とレクチャーされた。思えばその時、見知らぬ旅人同士が語らうという体験も初めてだった。
それから10年あまりは毎年のように十月十日を日程に組み入れ、北海道を旅した。
そこには日常の空気とは違った何かがあり、その明確ではない何かを楽しむために旅を重ねていった。
2000年代に入り、僕の旅の志向は海外へとシフトしてゆく。
旅の予算はガソリン代や高速料金、フェリー代、さらには雑魚寝の旅人宿でも1泊5000円前後はかかる時代へとなると、飛行機で一っ飛び出来る海外は時間の節約に加え、行き先によっては旅の予算もはるかに安かった。
昨年秋、十月十日は過ぎたがその数日後に4連休をいただけたことで、久方ぶりに秋色に染まる北海道へと飛んだ。
かつてのような一晩はひたすら新潟へと走り、さらにもう一晩はフェリーで過ごす旅ではなく、溜まったマイレージを使っての飛行機にレンタカーを借りての旅だった。
北海道は言うなれば僕の旅の原点。
かつて感じたような何かがなくとも、行けたことだけで甦るものが多々あった。
とにかく、空気が爽やかだった。
あわよくば「今年も」と好奇が過ぎったが、十分過ぎる思い出がある北海道よりは他の旅へと日程も予算も組み替えた。
今の自分が志向する旅は北海道を旅した頃とは大きくかけ離れたけれど、日常を離れて愉しむ裕福さは今も昔も変わらない。
日常があって旅があり、旅があるから日常も成り立つ。
十月十日にしてそう思う…。
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