sometime,somewhere...
Posted by sammy - 2009.07.31,Fri
静かなトリニダーの朝
キューバへ来て3日目、僕はハバナから古都トリニダーまでバスで向かった。
正確に言えばトリニダーへ行くのはこれが2度目になる。
初めてキューバを訪れた2001年、ハバナから1泊2日の現地ツアーで2時間ほど立ち寄ったことがある。
そのときの印象はパステルカラーの古い町並みが美しい、静かな佇まいの町だった。
今回はそんな町に自ら訪れ、時間に縛られずにゆっくりと町歩きを楽しみたかった。
だから、行きも帰りもVIAZUL社の長距離バスを使い、トリニダーへは夕方着いて2泊する予定を立てていた。
* * *
1日2便あるハバナ~トリニダー間のVIAZULバスはハバナ発が8時発の午前便と13時発の午後便とがあり、いずれも所要6時間ほどでトリニダーへ到着をする。
僕が利用したのは13時発の午後便。
出発前のバスターミナルで意外な出会いをした。
キューバでは中々出会うことの少ない日本人ツーリストと同じバスで向かうことになったまではよくあるパターンだが、この出会ったツーリスト、Kくんは驚くことに僕と同郷であるばかりか、現在はブラジル南部でお寺を営む僧侶でもあった。
もちろん、このキューバ旅行は仕事とは無関係の個人で来ているものだったが、途中経由したリマでは法事の仕事も済ませていると言うから、なんともインターナショナルなお坊さんである。
訊けばK君の実家は僕の家からは川を挟んだ向こう側にあり、年は僕よりも7つ下だったが職場の同僚関係の人間と旧知の部分もあり、話は自然とはずんだ。
これは帰国後に知った話だが、K君の実家は地元でも有名なお寺で、僕の親戚もそのお寺の檀家だった。世界は意外と狭いものである。
こんなK君と一緒になったトリニダーまでのバス移動だったが、話が弾む一方で軽いバス酔いをおぼえるほど、道はガタゴトとした悪路だった。
キューバの道はちゃんと舗装はされてはいるが、フラットなアスファルトは首都ハバナから延びる途中までの道だけで、それ以降は道幅も狭く、舗装はされているとは言え路面状態も悪いため、バスの後方に席を取った自分らには予想以上に堪える乗り心地となってしまった。
それでも定刻よりも早く、午後6時にはトリニダーへ到着をした。
と同時に、凄まじいまでのカサ・パティキュラル争奪戦がバスを降りると同時に始まる。
トリニダーはユネスコの世界遺産にも指定された歴史ある佇まいの古都だが、その中心部には大きなホテルなどは皆無に近く、こうして個人でやって来る観光客らは必然と政府認可で個人が経営する民家でもあるカサ・パティキュラルへ泊まることとなる。
僕もそのつもりでいたし、バス・ターミナル到着時の勧誘の話は聞いていた。が、想像以上だった。
次から次へと揉みくちゃにされながら、「さあ、決まった。荷物は持つわよ!」といった具合に強引に勧誘をされるのだ。
この勧誘の凄まじさは、ここがとても社会主義国キューバとは思えない争奪戦でもあった。
「これではとても選ぶどころではない…」。
するとK君が、「こちらのカサがベッドに空きがあるようです」と声をかけてきた。
K君はすでにハバナで泊まっていたカサの主人からトリニダーのカサの紹介を受けており、そのカサの主人であるアレックスが出迎えに来ていた。
その同じカサにどうやら泊まれるようである。
選ぶどころではない争奪戦に困惑していた僕は一つ返事で即決をして、K君と同じアレックスのカサへ向かうことにした。
パステルカラーの家壁が美しい町並み
石畳の道
そのアレックスのカサ、「Hoatal Alexis Beniteg Inchauapi」は静かな佇まいの歴史地区のほぼ中心に近い場所にあった。
到着が日が沈む前の夕方だったこともあり、周囲に建つパステル・カラーの家並みが強い西日を浴びて、ことのほか美しかった。
部屋はゆるやかな坂道に面した通りから直接入れる入り口があり、そこから中へと入ると空いていたのはこの部屋の2つのベッドだけのことで、もう1部屋ある部屋は既に埋まっていた。
要するにアレックスは初対面の日本人2人が同じ部屋に泊まると思って誘ったらしいが、僕もK君もお互いに短い旅の中、同室で過ごすのは窮屈でもあった。
加えて、周囲の家々はどこもカサを経営しているから宿勧誘の争奪戦を逃れた今、空いているお気に入りの部屋を探すには困らず、あえてシェアをすることなくゆっくりと他の部屋を探してみたかった。
ブラジルで暮らすK君はポルトガル語交じりのスペイン語を屈指し、僕のその旨をアレックスに伝えると、アレックスは親しい何軒かのカサを一緒に回って紹介してくれた。
僕の中にあるカサ選びの条件の一つは「家庭的」であり、できれば小さな子供がいるような家に泊まってみたかった。
そんな条件に見合うカサが見つかったのは何軒も回った後で、そのカサ、「Hostal Media Luna」はアレックスのカサから1ブロック東にある通称Luna通りに面した邸宅だった。
応対してくれたのはまだ若い奥さんのマリーで、このマリーは家族の中で唯一、英語が話せる。
家族は旦那さんのホルヘ、おばあちゃんと7歳の息子ホリヒートと4歳の息子ガブリエルの5人家族。
部屋は小さな中庭に面したダブルの部屋と家の中に入り口のあるツインの部屋があったが、ツインの部屋がキューバでは珍しいトイレとシャワーが別々になった部屋だったこともあり、迷わずにこちらを選んだ。
料金は1泊20cuc(約2200円)。
何軒か回ったこともあるが、どうやらこの値段がトリニダーの一般的なカサの相場みたいだった。
歴史地区はどの家々も繁栄を誇った18~19世紀に建てられた立派な邸宅がそのまま残っており、広々としたお屋敷はカサ・パティキュラルとして部屋の一部を旅行者向けに貸し出している家がほとんどだ。
僕の泊まったカサも左右に鉄格子のある玄関を入るとアンティックなリビングがあり、その奥には中庭、そして階上には見晴らしの良いテラスがあった。
カサのリビング
テラスから見る景色
チェックインを済ませ、さっそく階上のテラスから西日のあたる町と、その先にある海を眺めてみた。
見渡す周囲の屋根瓦は赤く、パステル基調のカラフルな色合いの家々に道は昔からあるだろう石畳の道。
そして、所々に立つパーム・ツリーが南国情緒を醸し出している。
高い家がなく、こじんまりとした落ち着いた家並みの中、小鳥の鳴き声、路上で遊ぶ子供たちの声がささやきのように聞こえる。
歴史地区内は許可なく車の乗り入れができないので、昔さながらの静かな佇まいがそのまま味わえる。
「いいところへ来たなぁ」。
トリニダーはまさに、現代とはかけ離れた18世紀のキューバがそのまま残った町だった。
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Posted by sammy - 2009.07.11,Sat
午後6時半、ハバナ・セントロ地区の街角に建つコロニアルなカサ・パティキュラルの2階にあるテラスから街のざわつきを耳に、人々が皆一緒に楽しく暮らしている街の様子を見つめる。
いくつかの家々からはテラスに出てただボンヤリと通りを見つめている人、人、人…。
上半身裸の青年、若く仲の良い女の子2人、これまた上半身裸で4階建てアパートの屋上から見つめる青年。
通りを挟んで真向かいの部屋では金髪の少女が鏡の前で髪を整えている。オシャレをしてこれから、どこかへ出かけるのだろうか?
耳を澄ませばざわめきの中、カタカタとという馬車の音色が鐘を鳴らしながら聞こえてくる。テラスから眼下の通りを見ると、貨車に乗っているのは子供たちばかり。そろってどこかへお出かけなのか?
こうして、ただボンヤリとした時間を過ごしていると、今日1日街をさまよい歩いた疲れも和らいでくる。
どこかホッとするやわらかな時間と空気が、ここには流れている。
日もずいぶんと傾き、日差しの強さも弱まり、時折吹くサァ~っとした風が実にさわやかだ。
ここには生活の臭いがあふれている。
人々が楽しく生きている姿がどこから見ても美しく、少々泥臭く描写されている。
* * *
どこかのアパートの部屋から大音量の音楽が聴こえてきた。
濡れた髪をタオルで拭く少女が、こちらの合図に気づいてポーズを見せた。
最低限の生活の営みを求めた革命から今年で50年。
みんな楽しく生きていた。
Posted by sammy - 2009.06.28,Sun
マレコン通り
今回の旅は最初の2泊がハバナ、間にトリニダー2泊を挟んで最後は再びハバナに3泊する旅程を組んでいた。
ハバナではまず、セントロ地区にあるカサ・パティキュラル(民泊制度、以下カサ)に2泊することにしたが、後半のハバナではロケーションを代えて情緒あふれるビエハ(旧市街)地区、もしくは思いっきりカリブの海を堪能できそうなマレコン(海岸通り)沿いのカサに泊まってみたかった。
そしてそれは実際に居心地の良さとロケーションの良さを自分の目で見て確かめて、決めてみたい。
ハバナ滞在2日目はそんなカサ選びをしながら街歩きをしてみた。
* * *
実際に街を歩くとカサ経営の認可を承認する青いマークを玄関に付けた家は無数にある。
キューバ言えどもネットが普及した今ではネット上で検索をすればこれまた、無数の数のカサが出てくる。
僕はそんな中、事前にネットで見つけたビエハ地区のラズ(LUZ)通りにある比較的キレイそうな、そしていかにも親しみやすそうな家庭のカサへ行ってみることにした。
そのカサ、通称「セルジオの宿」はいかにも古びたビエハの細いラズ通りをハバナ湾に向かった港の手前にあった。
セントロもビエハもざわついた街の雑踏は同じだったが、ビエハの方が各々の通りの幅が狭くその分、家々の密集度も濃く、そして混沌さも増して感じる。
セルジオの宿はネット上の地図ページのコピーを頼りに行ってみたが、表示された"LUZ 109"と言う住所にある比較的新しいアパート形式の建物の中にはいくつもの住居とカサがあり、僕が最初にブザーを押してしまったのは3階にあるクリスティーナというご婦人が切り盛りしているこれまたカサ・パティキュラルだった。
「セルジオのカサは2階の5号室よ」。
いかにも人の良さそうなクリスティーナがそう案内してくれたが、せっかくだからこのカサも中を拝見させてもらうことにした。
今泊まっているセントロのカサ・マリアは家の作り自体が中庭のあるコロニアル形式だったため、玄関やその奥にあるダイニングこそ共有だったが部屋は中庭に面して独立した部屋だった。
対してアパート形式のこのカサは部屋はごく普通の家の中の一部屋といった感じで、表通りに面した奥のスペースにベランダ付きであり、いわゆる本当のホームステイ感覚で滞在できそうな作りでもあった。
不意打ちに訪問してしまったカサだったが、応対してくれたクリスティーナも親切なご婦人で、彼女の話す英語も分かりやすかった。
「ここに決めてしまおうかな?」。
心は大きくぐらついたが念のため、その真下の2階にあるセルジオの宿も見ておくことにした。
ベルを鳴らすと出てきたのはスペイン語しか話せないセルジオの妻、ミリアだった。
僕が「セルジオ?」と言うとセルジオはどうやら外出中らしく、電話で呼び出しをしてくれた。
その間に部屋を見せてもらったが、同じアパートの3階と2階ということで作り自体はクリスティーナのカサと同じだったが、3階にはあったベランダが2階にはなかった。
「う~ん、3階の方がいいかな?」。
クリスティーナの優しい接し方にも好感を感じていた。
ただ、クリスティーナは昨年、旦那さんを亡くしているそうで一人暮らしでカサをやっており、対してセルジオのカサにはセルジオとミリアの夫婦に加え2人の子どももいた。
僕の希望の中でホームステイ感覚もそうだが、子供もいる家庭に泊まってみたい希望があった。
そうこう悩んでいるうちにセルジオがミリアからの呼び出しに応じて帰ってきた。
僕がネット上で検索したいくつものカサの中からセルジオのカサをピックアップしたのは、家族で写っている写真の笑顔が実に印象的だったことがある。
その笑顔の主、セルジオは写真の印象どおり、実に明るく陽気な男で、オーバー過ぎるほど親切丁寧に話す態度は彼の人柄をあらわしているようだった。
左から娘のレオノール、セルジオ、ミリア、娘の友達で近所に住んでいる双子の姉妹
正直、セルジオに会ったことで僕のカサ選びの悩みは深みにはまってしまった。
この2つのカサはどちらを選んでもアタリに感じたが、同じ建物の上と下の部屋だったこともあり、どちらかを選ぶと選ばなかったどちらかに悪い気持ちがあり、2つのカサを見せてもらったのは参考にはなったがあきらかに失敗だった。
* * *
昼食を挟んだ午後はもう一つの候補、マレコン沿いを捜し歩いてみた。
こちらは特にこれといった候補はなかったが、通りを歩けばカサ・マークの付いた家はいくつもあり、まずはマレコン沿いでも際立って目立つ高層アパートの中からカサをやっているいくつかの階や、他のアパートの部屋も見せてもらったが、どこの部屋もロケーションとしては部屋の中から目の前にカリブの海が広がる最高のものでも、出てきたご婦人がスペイン語オンリーだったり、社会主義国キューバの中にあって生活レベルが高いせいなのか、調度品にしても態度にしても敷居の高さを感じたり、一緒にホームステイ感覚で暮らすには引っかかりを感じるものばかりだった。
こうなってくると気持ちは大きく、昼に訪問したあのビエハの2部屋に傾く。
「どちらにしようか?」。
そんなことを考えながらマレコンからビエハへと通じる公園通りを歩いて向かう。
マレコンからビエハへと通じる公園通り
こと、値段に関してはマレコンの高級なカサがどこも35ペソだったのに対して、ビエハのカサは20ペソだった。
加えてオーナーはいずれも人懐っこい。
どちらも捨てがたかったが僕は結局、家族のあるセルジオのカサを選び、3日後の土曜日から3泊する旨を告げ、予約金として最初の1泊の宿泊代金20ペソを支払った。
3階にあるクリスティーナのカサには一言、お詫びをしようと伺ったが留守だったため、簡単な英文のメッセージを玄関に挟んで帰った。
* * *
後日、ラズ通りを歩いていると3階のベランダからいつものように通りを見つめるクリスティーナの姿があった。
「あのメッセージはいただいたわよ。Don't worry !! 」。
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セルジオの宿
http://www.monkibo.com/havana/
クリスティーナの宿
http://www.geocities.com/sucasacubana/
*この"LUZ 109"のアパートには他にもいくつかのカサがあり、立地、キレイさでもお薦め。
通常、こういったカサのサイトは斡旋業者などが作成しており、サイト上で表示された宿泊料金はやや高めの設定になっている。
この2つのカサは実際に行ってみると料金はいずれも1泊20ペソだった。
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